映画 8

 

初めて新海監督の作品を観た。

地震に対する根源的な(立ちすくむような)恐怖と、アニメーションの躍動感とのギャップが、最初、自分の中でうまく噛み合わなかった。

ネコがしゃべったり、人が椅子になったり、ファンタジー色も強くて、どれだけ現実的な感覚で受け止めればいいのか、よくわからないまま映像を眺めていた。

 

草太さんの潜在意識が海の底に落ちるシーンで、スーッと物語に入り込めた。

不安を吐露し、セピア色の風景に飲まれる姿を見て、自分も切実な気持ちになった。すずめに行く末を託す気持ちになった。

 

ダイジンからしたら、すずめは人柱の役目から解放してくれた恩人でもあるけど、すずめ達にとっては厄災のもとのような存在になってしまった。それを理解し、受け入れ、要石の姿に戻った…っていうのが哀しいなと思った。

常世の混沌を鎮め、現世の平穏を保つために、誰かが人身御供にならなければならない」という結末は、『ブレイブ・ストーリー』を連想させ、より苦しくなった。(ちょうど先月読み返して、涙したところだったのでよけい…)

 

いろんな要素が詰め込まれていて、難しさもあったけど、考えること、感じることも多かったです。

 

ありがとうございました。

 

本 14


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『オッドタクシー』の関口とヤノについて考えてるうちに、この小説↑を思い出し、何年かぶりに読んでみた。

「え、こんなに胸に迫る話だっけ?!」という驚きと、「この表現、元の文章ではどう書かれてるんだろう?」という興味が湧いたので、原文を調べてみた。

自分の受け取り方も付け加えたけど、違うかも。

Triangle (White,Teri)

『真夜中の相棒』テリー・ホワイト 小菅正夫[訳]

ページ数は紙の文春文庫版

 

"Maybe I just needed somebody, too, Wash,"  he said finally, quently. "Maybe I was just tired of being by myself. Johnny likes me. I like him. We get along okay when the rest of the frigging world leaves us alone."

「たぶん、おれもだれかを必要としていたからだろうよ、ワシュ」最後に彼は静かに言った。「ひょっとしたら一人でいるのに疲れたのかもしれん。ジョニーはおれを気に入ってる。おれも彼が気に入ってる。ろくでもない世間のほかの連中が放っといてくれれば、おれたちはうまくやっていけるんだ。」 ( p.178)

前半部分、just を繰り返し使うことで、切羽詰まってる様子が伝わった。

when〜 以降は、原文の方がより「世界から切り離された俺たち」という印象が強くなるなと思った。

 

The tears were unexpected, but he didn't try to hold them back. He made no sound that might disturb Johnny, but let the tears roll down his cheeks unheeded, dampening the pillow and the blond strands that touched his face.

思いがけずに涙があふれてきたが、それを押しとどめようとはしなかった。ジョニーの眠りを妨げるような音は立てなかったが、枕と頬に触れる金髪を濡らしながら、涙がとめどなく流れるのに任せた。(p.194)

後半の長い一文が掴めない。roll down(転がり落ちる) とstrand(立ち往生する) で「とめどなく」のニュアンスになるのかな?

 

But for now he was content to sit in the bathing calm of the moonglow, watching as Mac slept, letting the night wrap around them like a blanket.

しかし、今は月の光を浴びた静けさの中に坐り、マックが眠るのを見つめ、夜の闇が褥のように自分たちをくるむのに任せることに満足していた。(p.348)

訳文が美しい!原作が出版されたのは1982年だし、物語の質感的にも、硬めの日本語が合うなーと思った。

 

They might have been the only two people in the city. Simon sensed an almost unbearable loneliness in the slumped shoulders and impassive face he caught glimpses of in the windows they passed.

Loneliness, after all, was something he was sort of an expert on.

まるでこの大都会に彼ら二人きりしかいないような感じだ。落とした肩と、通り過ぎるウィンドーにちらっと映って見える無表情な顔に、サイモンはほとんどやり切れないような孤独を感じ取った。

いってみれば、淋しさという点で彼も人後に落ちないのだ。(p.360)

「人後に落ちない」はどう表すのか気になっていた。he was sort of an expert on. (彼はある種の専門家である) の言い換えと知れてすっきり。

loneliness の訳を、「孤独」と「淋しさ」で使い分けているのが素敵だなと思った。

 

 

 

以上で終わります。ありがとうございました。

映画 7

 

よかった! 

 

※以下、内容に触れてます。原作未読。

 

喪失を癒す物語でもあるのだなと思った。予告で示されてなかったから、「こういうテーマもあったんだ」と、見ながらしんみりした。

山添さんが長く手を合わせてるときの沈黙・静寂は、一緒に祈るような気持ちになった。

 

主人公2人の交流が深まるにつれ、画面に映る光量が多くなっていくのがよかった。少しずつ夜明けが近づくような、雪が溶けて、春の息吹が目覚めるような…。

時折挿入されるビルの夜景が、プラネタリウムの星々と重なって見えるのも素敵だった。弟さんの手記を元に、夜の時間のかけがえのなさを説くナレーションも、心に沁みた。

 

あと、ネタバレではないけど、北斗くんの足が長すぎて「足、長っ」ってなる瞬間が何回かあった笑 稲妻のごとく、画面を縦に走ってた。

 

以上で終わります。

ありがとうございました。