本 14


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『オッドタクシー』の関口とヤノについて考えてるうちに、この小説↑を思い出し、何年かぶりに読んでみた。

「え、こんなに胸に迫る話だっけ?!」という驚きと、「この表現、元の文章ではどう書かれてるんだろう?」という興味が湧いたので、原文を調べてみた。

自分の受け取り方も付け加えたけど、違うかも。

Triangle (White,Teri)

『真夜中の相棒』テリー・ホワイト 小菅正夫[訳]

ページ数は紙の文春文庫版

 

"Maybe I just needed somebody, too, Wash,"  he said finally, quently. "Maybe I was just tired of being by myself. Johnny likes me. I like him. We get along okay when the rest of the frigging world leaves us alone."

「たぶん、おれもだれかを必要としていたからだろうよ、ワシュ」最後に彼は静かに言った。「ひょっとしたら一人でいるのに疲れたのかもしれん。ジョニーはおれを気に入ってる。おれも彼が気に入ってる。ろくでもない世間のほかの連中が放っといてくれれば、おれたちはうまくやっていけるんだ。」 ( p.178)

前半部分、just を繰り返し使うことで、切羽詰まってる様子が伝わった。

when〜 以降は、原文の方がより「世界から切り離された俺たち」という印象が強くなるなと思った。

 

The tears were unexpected, but he didn't try to hold them back. He made no sound that might disturb Johnny, but let the tears roll down his cheeks unheeded, dampening the pillow and the blond strands that touched his face.

思いがけずに涙があふれてきたが、それを押しとどめようとはしなかった。ジョニーの眠りを妨げるような音は立てなかったが、枕と頬に触れる金髪を濡らしながら、涙がとめどなく流れるのに任せた。(p.194)

後半の長い一文が掴めない。roll down(転がり落ちる) とstrand(立ち往生する) で「とめどなく」のニュアンスになるのかな?

 

But for now he was content to sit in the bathing calm of the moonglow, watching as Mac slept, letting the night wrap around them like a blanket.

しかし、今は月の光を浴びた静けさの中に坐り、マックが眠るのを見つめ、夜の闇が褥のように自分たちをくるむのに任せることに満足していた。(p.348)

訳文が美しい!原作が出版されたのは1982年だし、物語の質感的にも、硬めの日本語が合うなーと思った。

 

They might have been the only two people in the city. Simon sensed an almost unbearable loneliness in the slumped shoulders and impassive face he caught glimpses of in the windows they passed.

Loneliness, after all, was something he was sort of an expert on.

まるでこの大都会に彼ら二人きりしかいないような感じだ。落とした肩と、通り過ぎるウィンドーにちらっと映って見える無表情な顔に、サイモンはほとんどやり切れないような孤独を感じ取った。

いってみれば、淋しさという点で彼も人後に落ちないのだ。(p.360)

「人後に落ちない」はどう表すのか気になっていた。he was sort of an expert on. (彼はある種の専門家である) の言い換えと知れてすっきり。

loneliness の訳を、「孤独」と「淋しさ」で使い分けているのが素敵だなと思った。

 

 

 

以上で終わります。ありがとうございました。