雨の夜ぼんやり流れる (本 4)

 

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彼は昔からいつでも他人のことはどうでもいい人だったので、なんでも話しやすかった。彼の姿が暗い店明かりに浮き上がってるのをじんと見ていたら、あの頃の日常の空気をまるごと思い出した。けだるくて、明日がなくて、燃えていた。

 

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あの能天気ながらも毅然としたロックンロールの響きに合わせ、藤田は現れるだろう。愚かな、剛毅さを漂わせて、やってくる。そして、死なない。

「なるほど」私は学んだ気分になる。「人間というのは、眩しい時と笑う時に、似た表情になるんだな」